会うは別れのはじめ


「書道(漢字)は学んできましたが、仮名を習ったことがないのでお願いします」
そうおっしゃって
お客様のご紹介でご縁いただきご入室なさった方は
お忙しいご商売屋さんの奥様でした
のちに お店の定休日の夜には
書道教室を開いていらっしゃったことを知りびっくりしました
私なんぞでお役に立てるのか…
けれど そのようなお立場は一切表に出さず
いつも謙虚で素直でとってもチャーミングで
定休日の午前中お時間作り
手のひらに汗かくほど懸命に
仮名の運筆に励んでくださいました
働き者 という言葉がこれほどぴったりな方が
いらっしゃるだろうか…
いつもそう思っていました
多忙が続き少し足が遠のいても
「時間作ってまた必ず行きます!だから先生!待っててね!」

病いに臥せっておられると知った時から
さほど時間が経ったとも思えず
元気になってまたお会いできるものと
信じて疑っていませんでしたが
この雛月一日…訃報が届きました
昨夜はお通夜に参列させていただきましたが
未だ夢を見ているような気持ちです
こうして記事を書くことが彼女への
供養になるのかも…わかりません
私自身が納得し気持ちを整理したいという
自分勝手なわがままなのかもしれません
が 清書を前に揮毫し続けていらした
彼女の「いろはうた」をじっと見ていたら
たくさんの大切なものを残してくださったことに
改めて気づかされるのです
中でもとても彼女らしい文字を一部ご紹介させてください
そして 写真下は金子みすゞの詩からの一節で
人はお墓へ入るけれど いい子は翅が生えて天使になって飛べるの
という英訳詩の後半部分です
昔かけがえのない友を事故で失ってしまった方から
この英訳詩を作品にしてほしいと託され
納めさせていただいたことがありました
大きな度量でご家族を守り愛し
多くのお客様やお仲間お弟子さんに愛された
まさにひまわりのような彼女に
心からの感謝と共にこの詩を捧げたく思います

万里子拝